10歳の壁、9歳の壁などという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
子どもの発達段階では、9~10歳前後にかけては非常に複雑な発達を遂げる時期です。今まで通りのやり方ではうまくいかないし、ここで親が目や手を離してしまうと、思春期の関わり方や関係性にも影響が出る、などといわれることも。
この記事でお話したいのは小学校中学年頃から起こる「メタ認知」の発達です。
最近関わり方が難しくなってきた、今までの対応ではダメだと感じている親御さんはご一読ください。
10歳前後で発達し始める「メタ認知」とは?
メタ認知という言葉を知っていますか?
メタ認知とは、簡単にいうと「自分自身を客観的に見る力」のことです。
自分が認知している自分を、違った視点から認知するということで「認知を認知すること」なんて言われることもあります。
今までは、自分の思うまま、ありのままだった子ども。自分という存在や自分の行動をかえりみるということもなかった幼い子どもが、「自分って、他者から見てどうなんだろう?」と疑問をもつようになるのです。
それは時に、先生からの評価や友達からの言葉、そして親からの言葉などがメタ認知に影響します。
10歳の壁と呼ばれる時期に起こるできごとによっては、自己肯定感がグンと低くなってしまうこともあるし、ちょっとしたささいなきっかけで友達関係や学校生活に問題が生じたり、不登校になったりすることも。
10歳(小4の壁)の壁:勉強面でのメタ認知
学校ではやはり、勉強の面で躓きやすくなる子どもが増えます。勉強は後からでも取り戻すことができるので、正直なところあまり心配しすぎない方がよいと筆者は考えていますが、勉強で躓いたことを精神的なストレスに感じてしまうケースも多いのが厄介なところです。
学習では算数につまずきやすくなる!?
学習面では、算数へのつまずきがもっとも目立ちます。その理由は「抽象的な学習内容」になっていくのが一番の原因でしょう。
今までの学習では「はな子さんがりんごを3つもっています。たけし君がりんごを6個持っています。合わせて何個ですか?」というような、具体的な事例に置き換えて考えられるような内容が主でした。
文章問題にした時にも理解しやすく、イメージが湧きやすいですよね。
しかし、小学校4年生くらいになると少数や分数の計算などの内容が入ってくるので、一気にイメージが難しくなるのです。日常生活で「6分の4+1と3分の2」なんていう計算は、する機会がほぼないといってもいい。
そんな中、イメージのわかない計算や式を解くという作業に、つまずいてしまうことが増える……というわけです。
目的がないことからモチベーションが低下する
勉強の内容が難しくなる一方で「これをやると、どんな効果が得られる」とか「これをやるとどんなことに役立つ」といった、目的を見失いがちな時期であることも事実です。
これが、中学生・高校生ともなれば「将来はこんな職業に就きたい」「あの学校に進学したい」といった希望を持てる子も増えてきます。しかし、小学校中学年の場合まだまだ「サッカー選手になりたい」「保育士さんになりたい」「ユーチューバーになりたい」といった、漠然とした憧れの職業しかない状態です。
この学習が、将来の何に役立つのかさっぱりわからない。それ以前に、勉強する意味やここを踏ん張って頑張ることでどんなメリットが得られるのかもよくわからない……という複雑な心境を抱える時期なのです。
「勉強ができない」ことへのメタ認知
勉強への意義が持てない、抽象的な学習に意欲が持てない……そうなってくると、勉強ができなくなってきます。
- やる気が出ない
- 勉強したくない
- 好きなことしかしたくない
- めんどくさい
- 勉強がわからない
こういった、自分自身の学習の「ダメな部分」というのも、メタ認知によってはっきりしてきます。
宿題をやっていない、できていない、勉強がわからない、勉強にいいイメージが持てない……といった、自分自身のネガティブな部分に目線が生きやすくなってくるわけです。
そもそも学習面だけのつまずきだけだったのが精神面に影響し、彼らのメンタル全体がアンバランスになる時期でもあります。
10歳の壁(小4の壁):精神面でのメタ認知
学習面だけでなく、精神面にも変化の訪れる時期です。自分が客観的にどういう人なのか、ということを意識しだすと日常生活のいろいろなことが気になりだします。
自分のダメなところが見えてくる
幼い頃には気づかなかった「自分のダメなところ」がクローズアップされてくる時期です。たとえば、友達が「その髪の毛変だよ!」なんて何気なく言ったことが、コンプレックスになってしまうとか、恥ずかしいと感じて引きずってしまったり。
- 容姿のこと
- ファッション
- 勉強ができない
- 苦手なことがある
- 友達関係の嫌なできごと
何気ない学校生活の中でも、子どもは「自分が他者からどう見えるか」ということを徐々に意識し始めるんですね。この時期は、早くて小学校4年生頃で、中学生になってはじめて感じ始める子も多いです。男の子よりも女の子の方が先にメタ認知が発達しやすいといわれますが、男の子でも10歳で精神的な発達が急速化することもあります。
雑に褒めても受け入れなくなる
今までは、大人が単純に「〇〇君、すごーい!」「かっこいいー!」と言っていればニコニコして喜んでいたのが、10歳前後になると素直に受け入れなくなることもあります。
自分の出した成果を「こんなの誰でもできるレベルだよ」「比較する相手のレベルがそんなに高くないし」なんて具合に、単なる結果だけでなく総合的な判断で「自分自身での評価」をつけることができる子も増えます。
表面的な言葉だけでなく、どこが・どんなふうにすごいのかをより具体的に褒めてあげないと、響かなくなってくるのです。

理解度が上がっているのに、大人には理解されない
子ども自身の頭の理解度がかなり上がってきているのに対し、大人は「まだまだ子ども」という目で見てしまったり「まったくしょうがない子こども」というレッテルを貼って接してしまうことも少なくありません。
中高生になると「大人なんて信じられない!」とか「大人は言ってもわかってくれない」という思春期特有の感覚を得ますが、実は10歳前後でも既にこの状態は始まっています。
- どうせ聞いてくれないでしょ
- 当たり前のことばかり言わないでほしい
- 細かい理屈ばかりでうんざりする
なんていう感想をもつ10歳も少なくありません。大人からみると、まだまだ幼くて「悪ガキ」という感じの子どもでも、心の成長が目覚ましいということです。

10歳の壁、メタ認知急成長期は頭ごなしに叱りすぎないで!
前途したように、10歳前後では精神的に目覚ましい成長を遂げている時期です。この時期には、さまざまな異変がやってくる恐れがあります。
- 勉強でつまずく
- 人間関係トラブルを起こす
- 学校に行けなくなる
- 体調に異変が出る
- ストレスを溜める
- イライラしやすい
このように、思春期にも似た状況になることがあります。10歳前後は「前思春期」ともいわれ、子どもによっては思春期さながらの精神状態であることも。
このときに注意したいのは「自己肯定感を下げないこと」です。
10歳の壁に直面したら、叱りすぎに注意する
精神面での目覚ましい発達を遂げているこの時期、頭ごなしに叱ることや、親から子への一方的なお説教はなるべく避けていきたいものです。
メタ認知という、自分への客観的視点を意識するようになったときは、親からの言葉にも敏感に反応します。子どもは自分でも、自分の悪いところ、ダメなところ、できていない部分を自覚しているのです。だからこそ、さまざまなバランスを崩したり、問題に直面しやすいわけですね。
そこを親や教師が「何をやっているんだ!」と責め立てることで、傷口に塩を塗るようなことになってしまうんですね。
もちろん、時には厳しく言って聞かせることも必要です。しかし「一緒に成長していく」という視点を忘れてはならないと感じます。子どもの視点に立ち、既にこの子は色々なことを理解し始めている……ということを念頭に置き、対話できるといいですね。
10歳の壁とメタ認知、この概念を知るだけでも大きく変わる!
10歳でメタ認知能力が発達する……という事実を知るだけでも、親から子への関り方や、子どもに向ける目線は変化すると感じます。今までは「まったくこの子は……」と思っていたけれど、実は心の中では驚くべき成長を遂げているのです。
それを知るだけでも、ふとした変化に気づくだけでも、子どもはそ「わかってくれた」という事実に喜びを感じるはずです。いつまでも単なる悪ガキではなく、10歳にして大人の階段を上り始めていることを頭の隅に置いておいてほしいなと感じています。/おとこそだて.com編集部

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