小児科は、赤ちゃんのうちに「かかりつけ医」を決めて、同じ病院にずっと通うのがいちばんよいとされています。
もちろん、子供の体質やアレルギー、病歴、薬の好みなどすべて把握してもらっている小児科に通い続けられるのがいちばんです。子
供も慣れている先生や病院の方が安心するので、コロコロ病院を変えるのはやっぱりよくないわけですよね。
でも「途中で変えてはいけない」という決まりはありません。いろいろな理由によって、小児科を変えざるを得ないということもあるんです。そして、何をもって小児科医を選ぶか……ということについても、いちど考えてみてほしいです。
この記事では、私が「最新の小児科」から「古い町医者」にかかりつけ医を変えたときのお話を、一体験談としてお話していきます。
小児科を途中で変えました。その理由は……?
私の住んでいる街の自力で通える範囲内には、小児科が2ヵ所しかありません。そのため、最初は2カ所のうちの「最新のクリニック」に通っていました。建物も設備も新しく、それだけでも安心感があります。子供用のテレビやプレイルームもあって、待合室の雰囲気もいい。
近所や幼稚園の知り合いのお母さんたちの多くが、新しい小児クリニックに通っていました。この辺に住んでいるなら、そのクリニックに行くのが当然……という空気感さえあるほどです。
でも、私はあえて古い町医者の小児科にかかりつけ医を変えることにしました。その理由は、こんなエピソードがきっかけでした。
新しくて評判の小児科クリニックから、古い町医者の小児科に変わったワケ
普段は最新の小児科クリニックに通っていましたが、その日は休日で病院はどこもお休み。そのため当番医だった、近所の古い小児科にかかることになりました。
建物は古いし、今はもう使われていないレントゲン室や処置室のような部屋が残っています。先生はいまだに手書きのカルテにハンコをバンバン押していて、最初は大丈夫かなと少し心配でした。先生はおじいさんで、話し方に特徴があってクセが強い。そして、子供のことを矢継ぎ早に高速で質問してくることで有名でした。
まるで、一問一答クイズをしているかのような感覚です。
「家族何人?」
「4人です」
「下の子幼稚園どこ?」
「〇〇幼稚園です。」
「この子の小学校どこ?」
「〇〇小です」
「アレルギーは?」
「あります。」
「何がある?」
「犬と猫とスギです」
「掃除の頻度は?」
「掃除機は毎日、拭き掃除は1週間に1回」
「お父さんお母さんアレルギーあるの?」
「父がアレルギー体質です」
「喘息は?」
「ありません」
「中耳炎の経験は?」
「1回あります」
実際はもっと長くて、細かい質問に及ぶこともあります。これが嫌でこの小児科を毛嫌いする方も多いと聞きますが、私はこんなに詳しく患者のことを知ろうとしてくれる先生は他にいないと思いました。
さらに、子供にもズバズバ質問したり、兄弟の様子を見て私に言葉をかけてくれるんです。
「この子、よく育ってるよ。親の顔色全然見てないもん。」
「あんたこの子を大事にしてるでしょ。だからこの子はこうやって下の子の面倒見るんだよ。」
つっけんどんで、ぶっきらぼうな話し方なんですけど、私はこうやって他人に子育てを褒めらたのは初めてでした。しかも、病気になって病院にかかって「大事にしてるでしょ」「よく育ってるよ」って言ってもらえるなんて、思いもしませんでした。
さらに、長い質問タイムが終わると息子を素っ裸にして、上から下までチェックして触ります。必ず、指差し確認のような感じで「異常なし!異常なし!」とか言いながら。それが私はすごく嬉しいんです。最新のクリニックでは絶対にありえないことです。
下の子が風邪をひいてかかったときは、この全身素っ裸診断によって「鼠経ヘルニア」を見つけてくれ、すぐに総合病院へ紹介状を書いてくれました。パンツも脱がせて全部見てくれるから、わかったこと。素人の私にはわからないようなレベルの異変だったので、早く見つけてもらったおかげで息子はさっさと手術を済ませることができたのです。
小児科を選ぶ基準は「新しい」ことや「評判」だけでいいの?
私は、小児科は複数かかってみて、母親の体感で「この先生がいいな」と感じる、ただそれだけで決めればいいと思います。口コミ?評価?そんなの関係ないと思っています。
特別な病気をもっているわけでなく、普段健康に暮らしているなら、どんな小児科でもいいと思います。「新しいからいい」「先生が優しいからいい」って、何をもって「いい」とするのかぼんやりとしすぎている気がするんです。
多くの親が「新しい病院」「優しい先生」に集まっている
なぜこんなにいい先生なのに、みんなこの病院に来ないんだろう。そう思ったとき、やはり人は「医療設備が最新である」「見た目の清潔感やスタイリッシュさ」「先生の雰囲気」で決めてしまうことがすごく多いのだろうと感じたのです。
最新の病院の先生は、確かに優しい先生です。優しい、とは「穏やかな口調」「物静か」であるという表面的な部分です。子供や親のことをどう思って診察しているのかは見えませんでした。
それでも、人気のある病院は評価が高く、常に予約がいっぱいで待ち時間は2~3時間が当たり前。それでも「人の評判がいい」「みんなそこに通っている」ということで、さらにどんどん患者が集まっていくんですね。
一方「クセが強い」「質問が多くて嫌」として評判を落としているうちのかかりつけ小児科医は、子供とその家族や親のことまでちゃんと知ろうとするし、時には育児を頑張っていることに対して、評価してくれたりもする……これって、本当に小児科医選びの基準は「親の肌感覚」でしかないということなんです。
決して新しいクリニックの先生を批判するわけではありません。相性の問題であり、どちらが正しい・間違いだというジャッジを伝えたいわけじゃない。子供に関わる大人を選ぶには、ちゃんと先生をよく見て自分の感覚を頼りに選ぶのがいい、という実体験からの学びでした。
小児科を始めとする病院の評判も、単なる「多数派意見」でしかない
あの先生は評判がいい、悪い、というのも、どこかに「多数派意見に賛同しておけば間違いない」という安心感は絶対にあると思います。
特に、はじめての子育てや、転居先で知り合いがいないような不安な状況、ワンオペ育児、母子家庭……いろいろな生活の不安があると、どうしても自分の肌感覚や直感を信じて何かを選ぶということができなくなっていくんですね。
でも、どんなことも「多数派意見」が正しいとは限らず、自分達に合っているとは限らないのです。病院の評価だって、星1をつける人が100人いたら、星5をつける1人がどんなに大事なことを言っても、相手にされないことがあるわけです。
子供の健康や、成長に関わるのが「小児科医」です。近所の小児科なら、何件かを順番に掛かってみたっていいわけです。1つの小児科に決めたら、ずっとそこに通い続けなければいけないというルールもない。予防接種のスケジュール管理も大事ですが、もっと臨機応変に柔軟に子供に関わる人を選ぶほうがいいのではないでしょうか。数字や他人の評価ではなく「母親の感じるもの」で選んだほうがいいのではないかと考えています。
小児科のかかりつけ医を変えるのはアリ。受診後、自分の感覚で決めてほしい
かかりつけ医は一度決めたらやたらに変えない、他の小児科にかかってはいけない。そんな風に思っていたことがありましたが、やっぱりいちばん大事なのは「子供や自分と、医師の相性」であると感じます。それを知るためには「新しいからいい」「古いからダメ」という固定観念を捨てること、また何をもって優しさや良い医者というべきかなども、考える機会があってもいいのではないでしょうか。/おとこそだて.com編集部